▼ バックナンバー ▼
Vol.1 オールスター投票用紙
Vol.2 スケジュール表
Vol.3 ラバーバンド
Vol.4 (欠番:作成中)
Vol.5 レプリカ・スウィングマン・オーセンティック 前編
Vol.6 レプリカ・スウィングマン・オーセンティック 後編
Vol.7 レアジャージ
Vol.8 レアグッズ
Vol.9 オールスター投票用紙2
Vol.10 Reebok & adidas
Vol.11 NCAAのウェア
Vol.12 NCAAグッズとそのデザインの多様性
レプリソーム グッズコラム
Vol.12 NCAAグッズとそのデザインの多様性
掲載日 2008年 7月 9日
最終更新日 2023年 12月 12日
はじめに
NCAAのグッズはNBAと異なり、様々な会社がライセンスを有していること、1チーム1口ではないことなどから、商品のデザインに個性や多様性が、しばしば見られます。また同時に、
アメリカの各地の大都市で販売されている商品、大学やその地元のみで生産・販売されている商品のデザインに、違いやちょっとした傾向、特徴が見出せます
。
そこで今回は、比較するサンプル数の多い、ノースカロライナ大学のTシャツを例に、お話したいと思います。
色々なメーカーの存在 = 種類の多様性
NCAAグッズにおいては、色々な会社がライセンスを保持し、独自の商品を開発しています。
これは同時にTシャツなど、1つの商品カテゴリーをとってもライセンス保持する会社の数だけ、商品の種類が存在することを意味しています。
下の、4種類のTシャツのプリントデザインをご覧下さい。
@大学
ANIKE
B地元企業
C大手チェーン店
いずれも、
「ノースカロライナ大学のスカイブルーのTシャツ」という点では同じですが
、
@ ジャージを模したもの(大学から販売)
※
A 独自デザイン(NIKEから販売)
B 独自デザインに地元でのキャッチフレーズを記載したもの(ノースカロライナ地元企業)
C 大学の創立年とロゴやチーム名等を記載し、Tar Heels全体を対象にしたデザイン(大手チェーン店)
と生産メーカーごとで、それぞれ独自のコンセプトと特色があり、
「スカイブルーのTシャツ」という限定された条件下でも、さらに各々の個性がある
ことがわかります。
こうしたことからも、
メーカーの数だけ(厳密にはデザイナーの数だけ)、商品に様々な種類が出てくる
こと、また、同じスカイブルーといっても、コントラストや明るさが異なり、
色にも種類が複数存在している
ことも、おわかりいただけるかと思います。
大学ロゴの多様性 = デザインの種類の多様性
最近のNBAでも増加傾向のあるロゴの種類。
セルティクスのレッド・アワーバック氏のロゴ
と、クローバーロゴ
のように、NCAAでも「1チーム1ロゴとは限らない」ということがあります。
例えば、ノースカロライナ大学です。
イニシャル NC
羊:リアル
羊:コミック調
NC&羊
足ロゴ
UNC+足ロゴ
画像の通り、左から North Carolina のイニシャルを重ねたもの、羊のロゴはリアルなものとコミック調のものとがあり、更に前者をあわせたロゴ、かかとにタールのTar Heelsを模した足ロゴ、そして足ロゴとUnivarsity of North CarolinaをイニシャライズしたUNCとをあわせたもの、メジャーな物として計6種類が存在します。
この事もグッズのデザイン多様性の一翼を担っています。
上の図をご覧下さい。
6種類のロゴがあった場合、ロゴをプリントしたホワイトのTシャツを作ると、6通り作れることになります。
また、
Tシャツの生地の色を変えたり、ロゴのレイアウトや、Tシャツ全面にプリントするなど工夫を凝せば、更に何種類かの商品が誕生する
ことになります。したがって、
ロゴの多様性がそのまま商品デザインの種類に、そのまま反映され、ロゴの多様性 = デザインの種類の多様性
になることがわかります。
これはノースカロライナ大学だけに限ったことではなく、同州のお隣の大学であるDUKE大についても5種類あります。
公式ロゴ
Dロゴ
ブルーデビル
ブルーデビル&D
バスケットゴール&D
デザインと傾向
上の5つの画像をご覧下さい。
大学のみならず、LAやNYやシカゴなどアメリカの主だった大都市でも販売されているノースカロライナ大学Tシャツのデザインです。
いずれも、ロゴマーク・大学名・チーム名・バスケットボール等を組み合わせ、独自のデコレーション(文字にアーチをかける、アクセントのラインを入れる、レイアウトを工夫するなど)を加えた造りをしているのが、おわかりになるかと思います。
対象の販売地域が、ほぼ全米であることからも、
アメリカのどの地域でも販売できるような、一般・万人向けを意識したデザイン
であるように思われます。
デザインと傾向 ― 地元の感情
上項の物に対して、上の商品は、大学あるいは所在する都市のみでしか販売されていないデザインのTシャツです。
応援のメッセージ「 Go Heels 」や、大学に対する気持ち「I (Love)」が描かれており、上の画像の物と比べて、
少し感情移入している
ことがわかります。
また、「 "Git-R-Done" 」と書かれたデザイン。
Git は Get の方言で、正式には「 "Get-R-Done" 」になりますが、直訳すると、「 R を成し遂げよう」という意味です。
これは、05-06シーズンにノースカロライナで買い付けてきた物で、その前年度に同大学は優勝を果たしました。
そこで、この「R」を Repeat と解せば、「 Repeat を成し遂げよう = 繰り返し優勝しよう」ということになり、この商品が、ここまで強く感情移入できる、
地元のファン向けに作られている( = 地元・大学限定の商品)
ことが考察できます。
更にこちらの商品も、大学のみなど限定地域でしか販売されていないデザインです。
フロントのプリントは、
『NC>DUKE:ノースカロライナ大の方が強い(大きい)というのは、誰にでもわかる初歩的な算数だろ?』という意味で、
背面には、『 Greater Than U(You):俺らは強い 』とプリントが入っております。
ちなみに不等号 > が逆に向いた、DUKEの方が強い、もあります。
上の商品に比べ、DUKE大学を引き合いに出すことで、更に感情移入し、徐々に語調が強くなってきています
。
こちらの商品の背面には、
『(つづりは似ているけど、)
Winning:勝利
と、
Whining:グチを言って嘆く
との違いだよ』
という内容の文面と、DUKE大学のロゴが入った服を着た子供が泣いている様子が、プリントされております。
つまり、「嘆くのはDUKE大(とDUKE大を応援している人)で、勝利するのはオレ達ノースカロライナ大だ」という、強烈なユーモアを描写したTシャツです。もう少し、意地悪く意訳するなら、「(オレ達が勝つんだから)DUKEの物を着て応援なんかしてるから嘆くことになるんだ」といったところでしょうか。
DUKE大学を比較対象にして、かなり露骨に自分達を持ち上げているのがわかります
。
ここまでくると、もう何も言うことはないでしょう。
背面に、『悪いといえばノースカロライナステイト大
※
、醜いといえばDUKE大学、そして良いといえばノースカロライナ大学である』という意味の文面がプリントされております。
ご近所に所在する地元の大学同士でないと、商品化できないようなきついユーモアが盛り込まれております(こちらも逆のパターンがあります:右画像)。
上の画像にはありませんが、フロントにも更に、『ノースカロライナ大学ターヒールズはGood』と書かれています。
地元の感情とNCAAのシステム
では、ここまで公然と罵り合えるノースカロライナ大学とDUKE大学やノースカロライナステイト大
※
との関係は、険悪なのでしょうか。NBAでも、ファイナルでの対戦相手でもない限り、公然と「●●をやっつけろ」とは言いません。今季07-08シーズンファイナルで、「Beat L.A. :L.A. (レイカーズ)をやっつけろ」と書かれたTシャツを着たファンを、ご覧になった方も多いかと思います。
シーズン中に獲得した勝率で、東西カンファレンス各上位8位・計16(16/30チーム)チームの最終トーナメント出場が決まるNBAに対し、300以上のチームが存在するNCAA
※
では、基本ルールとして、「
各カンファレンスの1位だけが出場確定
」とされています(65/300チーム:2位以下でも、協会の選考でトーナメント出場となる大学もあります)。
そのため、同じカンファレンスに属するチーム同士は、
自チーム以外は、必ず倒さなければならない相手である
ということになり、こうした
NCAAの制度が、同じカンファレンスの身近なチームへの対抗心を駆り立てる一因
となっています。そして、
その気持ちが、上でご紹介したような商品デザインとなって、具体的に表れていると考えられます
。
この中で1位にならないとトーナメント出場が確定にならない…
(2008年現在)
※NBAではカンファレンス(各15チーム)-ディビジョン(各5チーム)の編成ですが、NCAAの場合ディビジョンI(300〜チーム)・U・V-カンファレンス(10チーム前後)のように、階層の呼称やチーム総数が異なっております。
地元の人々
旅行記
でも触れてきましたが、アメリカにおけるスポーツとその所在地との結びつきはとても強く、日本でいうところの関西地区と阪神タイガースのような関係です。そして、ここまで大学同士が公然と罵り合えるのなら、その近隣地域の人間関係はどうなのでしょうか。
右
上
の画像は、
旅行記
にも掲載している、ノースカロライナ大付近のお店のトビラです。画像右側の通り、駐車禁止のマークにDUKE大学のロゴをあしらった物が見えます。つまり、No DUKE(DUKEはダメ)という意味です。
お店に入って店員さんに、翌日DUKE大へ行くことを話すと、彼らの口からは「強いチームだからなぁ」や、「手強い相手だよ」といった言葉を聞きましたが、「ひどい・悪い・嫌い」といった言葉は耳にしませんでした。
確かにトビラには、No DUKEとはありますが、店員さんとのやりとりからも、DUKE大のロゴの入ったシャツを着ていたからといって、お店から追い出されることは、おそらく、まずないと思われます。
ただ、このお店の所在地が大学付近、つまり
ターヒールズの聖地であり、聖地である以上、こういう主張を持っている
、というのをアピールしているだけように感じられます。
更に筆者の経験した出来事に、こんなことがありました。
シカゴからノースカロライナ州へ向かう便に、搭乗しようとしていた時のことです。シカゴで両足を手術して、松葉杖をつきながら、1人で搭乗しようとしている女の子を見かけました。
偶然にも席が隣になり、彼女の頭に目をやると、DUKE大学のキャップをかぶっています。会話をしているうちに、「日本から、どうしてノースカロライナ州へ行くの?」という質問に、「お仕事なんだよ。お目当てはノースカロライナ大」、そう言って、筆者がかぶっているノースカロライナ大のキャップを指さすと、女の子は「No〜〜〜!!」と言いながら、顔を横に何度も振りました。
かといって、
会話や彼女の笑顔が、そこで断絶したわけでもなく、談笑の後、互いに笑顔で到着空港で別れる
ことになります。
つまり、いずれのケースにしても、
「●●大学が好きがゆえに」
の裏返しのように感じられます。
地元のデザインと感情 その2:地元だからできる
もう1つ、強烈なユーモアを盛り込む、あるいは盛り込める理由に、地理的条件が考えられます。
右
上
の地図は、ノースカロライナ州の一部を示したものです。そして、各大学(ノースカロライナ大・DUKE大・ノースカロライナステイト大
※
)のロゴの位置に、大学が存在しています。
直線にしてその距離は、
ノースカロライナ大〜DUKE大 :約10km
DUKE大〜ノースカロライナステイト大
※
:約20km
かなり大学同士が近接した距離にある事がわかります。
もちろん、今までご紹介してきた商品を地元で販売すれば、この距離のため、すぐにお隣の大学に伝わってしまいますが、これは地元だからこそできることのように思われます。
つまり、お互いの悪口を言い合って、「●●大学って本当に・・・?」という気持ちを第三者に抱かせても、その人達が、実際に各大学を見て、判断できる距離に互いに存在し、また、それくらいの悪口やユーモア程度ではキズつかない、プライドを自負し、確固たる自信があるからだと考えられます。
逆に、
同じカンファレンスでも、先のような判断・確認がしづらい、離れた場所に所在するクレムソン大学やメリーランド大学を批判したり、遠い州に所在する強豪チームを批判すると、本当の中傷になりかねません
。
まとめ
これまでご紹介してきた商品が、ごくごく近距離に所在する地元チーム同士だからこそ、できるデザインであり、「●●大学が好きがゆえ」の感情に基づいていることがおわかりいただけたかと思います。
その
感情の深さに比例し、表現も色濃い物になっており
(右画像)、一口に「ノースカロライナ大学のTシャツ」といっても、ノースカロライナ地元向け(大学限定)のデザインと、他の都市や州向けのデザインとが存在します。
そして、その感情の表現として生まれた、
強烈なユーモアが盛り込まれたTシャツを販売・着用しているからといって、相手チームや応援している人を憎んでいるわけではなく
、NCAAのシステム上からも、倒さなければならないライバル(好敵手)として認識しているだけのように感じられます。
同時に、比較対照にする大学を選ぶにも、中傷や非難にならないよう、信頼を保てる距離の、ごくご近所の大学だけを選んでいることなど、細かな配慮が感じられ、地の利を生かした商品、
現地あるいは地元・大学限定商品
と言えます。
こうした感情は、アメリカにおけるスポーツとその所在地との強い結びつきに起因し、今は別の土地に住んでいても、チーム所在地の出身の人、チームが所在する土地に住んでいる人の、チームに対する強い愛着心から生まれていると考えられ、
こうした愛着心が、地元ならでは・大学限定の商品を生み出す源となっており、全米対象の商品と並んで、デザインの多様性にひと役かっています
。
再編集内容
● ユニフォームを模したもの → ジャージを模したもの
●ノースカロライナ州立大学 → ノースカロライナステイト
閉じる
つづきを読む/閉じる
▲ページの
トップへ